ログインのたびに、前に使ったパスワードを少し変えたものを入れている。共有のアカウントのパスワードが、誰かのモニターに付せんで貼ってある。退職した人が作ったアカウントが、まだ誰のものか分からないまま残っている。仕事のパスワード管理は、困ったことが起きるまで後回しにされやすいものです。情報処理推進機構(IPA)が毎年まとめている「情報セキュリティ10大脅威」でも、不正なログインやアカウントの乗っ取りにつながる脅威が取り上げられてきました。この記事では、仕事や事業の進め方を見直したい人に向けて、パスワードとアカウントを安全に管理するための基本を、手をつける順番に沿って紹介します。
- パスワードの付け方より先に、仕事で使っているアカウントを一覧にする
- アカウントごとに「誰が持ち主か」を決め、共有するものは分けて扱う
- 同じパスワードの使い回しをやめ、覚えずに済む保管の仕方を選ぶ
- ログインの確認を二重にする設定や、人が辞めたときの手順もあわせて決めておく
仕事のパスワード管理が後回しになるわけ
パスワードの管理は大事だと分かっていても、なかなか手がつきません。よくある理由を見てみます。
アカウントの数が多すぎる
メール、会計、ネットバンキング、取引先の受発注の画面、ホームページの管理画面など、仕事で使うアカウントは気づくと何十にもなります。一つずつ別のパスワードを覚えるのは難しく、似たものを使い回したくなります。
困ったことがまだ起きていない
これまで問題がなかったので、今のままでも大丈夫だと思いやすくなります。けれど、使い回したパスワードが別のサービスから漏れると、思わぬところでログインされることがあります。
誰が見直すのか決まっていない
共有のアカウントは、みんなが使っているぶん、誰が管理するのかがはっきりしないことがあります。持ち主がいないと、パスワードを変える人も、使わなくなったアカウントを閉じる人もいません。
見直しを始める前に確かめておくこと
パスワードを変えて回る前に、いまの状態をつかんでおきます。次の4つを先に確かめます。
仕事で使っているアカウント
思いつくものから書き出します。毎日使うものだけでなく、年に一度しか開かない申請の画面や、昔作ったまま使っていないアカウントも、分かる範囲で書いておきます。
一人で使うか、何人かで使うか
自分だけが使うアカウントと、何人かで同じものを使っているアカウントを分けておきます。何人かで使うものは、パスワードを変えたときに伝える相手がいるので、扱い方が変わります。
いまのパスワードの置き場所
頭の中、手帳、付せん、表計算のファイル、ブラウザの保存機能など、どこに置いているかを正直に書いておきます。直すのは後でかまいません。
会社や取引先の決まり
勤め先や取引先に、パスワードや機器の扱いについての決まりがあるかを確かめます。決まりがあるときは、そちらに合わせることを先に考えます。
使い回しを続ける場合と、アカウントごとに分ける場合の違い
同じパスワードを使い回すか、アカウントごとに分けるかで、何かが起きたときの広がり方が変わります。
一つ漏れたときの広がり方
使い回していると、どこか一つのサービスからパスワードが漏れたときに、同じパスワードのほかのアカウントにもログインされるおそれがあります。分けておけば、困るのはそのアカウントだけで済みやすくなります。
変えるときの手間
使い回していると、一つを変えようとしても、ほかのどれに同じものを使ったか思い出せないことがあります。分けて記録しておけば、変えるアカウントがはっきりします。
覚えておく負担
使い回しは覚えやすいのが利点です。分ける場合は、すべてを覚えようとせず、安全な置き場所に記録しておく前提で考えると続けやすくなります。
| 使い回しを続ける | アカウントごとに分ける |
|---|---|
| 一つ漏れると広がるほかのアカウントにも | 困るのはそのアカウントだけ広がりにくい |
| 変える先が分からないどれに使ったか思い出せない | 変えるアカウントがはっきりする分けて記録しておく |
| 覚えやすい頭の中だけで済む | 安全な置き場所に記録すべては覚えない |

パスワードとアカウントを整える流れ
一度にすべてを直す必要はありません。次の順番で、大事なものから進めます。
アカウントの一覧を作る
書き出したアカウントを一つの表にまとめます。サービスの名前、使う人、何に使うかを並べ、パスワードそのものはこの表には書かないようにします。
持ち主を決める
アカウントごとに、パスワードの変更や見直しをする持ち主を一人決めます。共有のアカウントほど、持ち主を決めておくことが大切です。
大事なものから使い回しをやめる
メール、お金に関わるもの、ホームページの管理画面など、乗っ取られたときに困るものから順に、ほかと重ならない長めのパスワードに変えていきます。
保管の仕方を一つに決める
付せんや、ばらばらのメモをやめ、パスワード管理用のツールや、鍵をかけた保管場所など、置き場所を一つに決めます。会社に決まりがあればそれに従います。
ログインの確認を二重にする
使っているサービスに、パスワードのほかに確認コードなどで本人かを確かめる設定があれば、大事なアカウントから使うことを考えます。設定の仕方は各サービスの案内で確かめます。

具体例:三人の事務所で共有のアカウントを整えた場合
流れをあてはめた例を見てみます。三人で仕事をしている小さな事務所の場合です。
一覧を作ってみた
三人で思いつくアカウントを書き出すと、全部で30ほどになりました。そのうち5つは誰が作ったのか分からず、2つはもう使っていないものでした。
持ち主を決めた
会計とネットバンキングは代表、ホームページと予約の画面はデザイン担当、と分けて持ち主を決めました。使っていない2つは、持ち主を決めたうえで閉じる手続きをしました。
付せんをやめた
受付の画面に貼ってあった共有のパスワードの付せんをはがし、三人で使える保管場所にまとめました。パスワードは、持ち主が変えたときに保管場所を書き換えると決めました。
大事なものから変えた
まずメールと会計の画面のパスワードを、ほかと重ならないものに変えました。確認コードで本人を確かめる設定も、使えるものから順に入れていくことにしました。
仕事のパスワード管理でよくある疑問
パスワードとアカウントの管理を見直そうとする人から、よく出てくる疑問をまとめました。
パスワードは定期的に変えたほうがよいですか
決まった間隔で変えることよりも、使い回さないことや、漏れたおそれがあるときにすぐ変えることを大事にする考え方があります。勤め先に決まりがあれば、それに従うのが先です。
ブラウザにパスワードを保存してもよいですか
便利な機能ですが、パソコンを人と共有している場合や、会社の機器で禁止されている場合は避けたほうがよいことがあります。自分の使い方と会社の決まりを確かめたうえで選びます。
共有のアカウントは一つにまとめるべきですか
サービスによっては、一人ずつアカウントを作れるものもあります。人ごとに分けられるなら、誰がいつ使ったかが分かりやすくなり、人が辞めたときも止めやすくなります。
パスワードが漏れたかもしれないと思ったら
そのアカウントのパスワードをすぐに変え、同じパスワードを使っていたほかのアカウントも変えます。お金や取引先に関わるものなら、関係する人に早めに知らせることも考えます。
人が入るとき、辞めるときの決まり
パスワードの管理で抜けやすいのが、人の出入りのときです。次の3つを決めておくと慌てずに済みます。
入った人に渡すアカウント
新しく入った人が使うアカウントを一覧から選び、誰が、どの順番で渡すかを決めておきます。共有のパスワードを口頭で伝えるのではなく、保管場所を通して渡します。
辞める人のアカウントを止める
辞める人が持ち主のアカウントは、辞める前に持ち主を別の人に移します。その人だけが知っていたパスワードは、移したあとに変えておきます。
一覧を見直す日を決める
半年に一度など、一覧を見直す日をあらかじめ決めておきます。使わなくなったアカウントや、持ち主が空いたままのアカウントがないかを確かめます。
仕事のパスワード管理を見直すときのチェックリスト
見直しを始めたら、次の項目を確かめていきます。
- アカウントの一覧がある仕事で使うアカウントが一つの表にまとまっているかを見ます。
- 持ち主が決まっているどのアカウントにも見直しをする人がいるかを確かめます。
- 大事なものは使い回していないメールやお金に関わるものが、ほかと同じパスワードでないかを見ます。
- 置き場所が一つになっている付せんやばらばらのメモが残っていないかを確かめます。
- 人の出入りの手順がある入る人、辞める人のときに何をするかが決まっているかを見ます。
今日のうちに、思いつくアカウントを10個書き出してみてください。使い回しているものと、持ち主の分からないものに印を付けるだけでも、次に何から直すかが見えてきます。
実践記事をもっと見る参考資料・出典
- IPA|情報セキュリティ10大脅威(確認日:2026年10月22日)


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