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長く同じ仕事を続けていると、社内では当たり前になっている知識や段取りが、外の人には役立つことがあります。経理の締め作業の進め方、採用面接の準備、小さな店の集客の工夫などです。ただ、「この経験を副業にしたい」と思っても、何をいくらで、誰に売ればよいのかが決まらず、手が止まる人は少なくありません。経験は、そのままでは商品になりにくく、「誰の、どんな困りごとを、どこまで手伝うか」という形に置き換えて、はじめて買う人が判断できるものになります。この記事では、仕事や事業の進め方を見直したい人に向けて、経験を書き出すところから、小さく試して商品の形を決めるところまでの考え方を紹介します。副業を始める前に会社の就業規則を確かめることも、あわせて取り上げます。
- 経験をそのまま売るのではなく、誰のどんな困りごとに役立つかに置き換える
- 得意なことの一覧より先に、人からよく聞かれたことを書き出す
- 最初は範囲と時間を区切った小さな形で試し、反応を見て直す
- 会社の就業規則や、前の職場の情報の扱いを先に確かめておく
経験がそのままでは商品になりにくい理由
「10年の営業経験があります」と言われても、買う側は何をしてもらえるのかが分かりません。経験と商品のあいだには、いくつかの溝があります。
買う人には中身が見えない
経験の長さや肩書きは、自分にとっては大きな意味がありますが、買う人が知りたいのは「自分の困りごとが片づくかどうか」です。経験を語るだけでは、その答えになりにくいことがあります。
手伝う範囲が決まっていない
「何でも相談してください」という形だと、頼む側はどこまで頼めるのか迷います。受ける側も、時間や手間がどこまで広がるか分からず、値段を決めにくくなります。
社内でしか通じない言葉が多い
長く同じ職場にいると、社内の言葉や前提のまま説明してしまいがちです。外の人に伝わる言葉に言い換える手間が、商品化の一部になります。
商品の形を考える前に書き出しておくこと
いきなり商品名や値段を考えるより、材料を先に書き出しておくと、あとで迷う時間が減ります。
人からよく聞かれたこと
同僚や後輩、取引先、友人から「これ、どうやっているの」と聞かれたことを書き出します。自分では当たり前でも、人が聞いてくることは、困っている人がいる手がかりになります。
時間をかけて身につけたこと
最初は苦労したが、いまは短い時間でできるようになったことを書きます。その差の部分が、ほかの人の時間を省く手伝いになる場合があります。
手元に残っている型
自分で作った手順書、チェック表、提案書の組み立てなど、繰り返し使っている型があれば書き出します。ただし、会社の資料そのものは持ち出さず、自分の考え方として説明できる部分だけを材料にします。
使える時間
平日の夜や週末に、副業に使える時間を見積もっておきます。時間に合わない形の商品は、始めても続けにくくなります。
経験をそのまま売る場合と、困りごとに置き換えて売る場合の違い
同じ経験でも、伝え方を変えると、買う人の受け取り方が変わります。
伝える言葉
経験をそのまま出すと「経理10年」のような肩書きの話になります。困りごとに置き換えると「月末の締めで毎回残業になる小さな会社の、作業の順番を一緒に見直す」のように、何が片づくかの話になります。
頼む側の判断のしやすさ
肩書きだけだと、頼む側は自分の悩みに合うかを想像するしかありません。困りごとが書いてあると、自分のことかどうかを判断しやすくなります。
値段と時間の決めやすさ
手伝う範囲が決まっていれば、かかる時間を見積もりやすく、値段も決めやすくなります。範囲があいまいなままだと、受けたあとに作業が広がりやすくなります。
| 経験をそのまま出す | 困りごとに置き換える |
|---|---|
| 肩書きの話になる経理10年など | 片づくことの話になる誰のどんな困りごとか |
| 合うか想像するしかない頼む側が迷う | 自分のことか分かる判断しやすい |
| 範囲が広がりやすい値段を決めにくい | 時間を見積もれる範囲を区切っている |

経験を商品の形にしていく流れ
書き出した材料から、小さく試せる形にするまでの流れです。一度で決めず、試しながら直していく前提で進めます。
困りごとを一文にする
書き出した中から一つ選び、「誰の、どんな困りごとを、どこまで手伝うか」を一文にします。例えば「はじめて人を採用する小さな店の、面接で聞くことの準備を一緒にする」のような形です。
手伝う範囲と時間を区切る
1回60分の相談、手順書を1つ作る、といったように、範囲と時間を区切ります。区切っておくと、自分の負担も見積もりやすくなります。
知り合いに試してもらう
最初は、困っていそうな知り合いに試してもらい、役に立った点と分かりにくかった点を聞きます。お金をもらう前に、言葉が伝わるかを確かめる段階です。
説明の文章を直す
試してもらったときに出た質問や感想をもとに、説明の文章を直します。相手が使った言葉は、同じ悩みを持つ人に伝わりやすい言葉の手がかりになります。
値段を決めて出してみる
かかった時間や、似たサービスの値段を参考にして、最初の値段を決めます。出してみて反応が少なければ、困りごとの書き方や範囲を見直します。

具体例:経理の経験を副業にしようとした会社員の場合
会社で経理を長く担当してきた人が、経験を副業の商品にしようとしたときの例です。
最初は「経理の相談」で考えた
はじめは「経理の相談を受けます」と書こうとしましたが、何を頼めるのかが分かりにくいと気づきました。相談の中身が広すぎて、値段も決められませんでした。
聞かれたことを書き出した
振り返ると、知り合いの個人事業主から「領収書をどう整理しているか」をよく聞かれていました。そこで、個人事業を始めたばかりの人の、経費の整理の流れづくりに絞ることにしました。
範囲を区切って試した
1回60分で、いまの整理のしかたを聞き、月ごとの流れを一緒に決める形にしました。税金の計算や申告の代行は自分の範囲に入れないと、最初に書いておきました。
感想から説明を直した
試した人から「置き場所を決めるだけで楽になった」と言われたので、説明の文章にもその言葉を使いました。こうした言い換えを何度か繰り返して、形を決めていきました。
経験の商品化でよくある疑問
始める前によく出る疑問をまとめました。
大した経験がない気がする
経験の長さより、人が困っていることと自分ができることが重なっているかのほうが大事です。人から聞かれたことを書き出すと、思っていたより材料が見つかることがあります。
会社の仕事と近い内容でもよいか
副業を認めているかどうか、競合する仕事を禁じていないかは会社によって違います。就業規則を確かめ、迷うときは担当の部署に聞いておくと安心です。前の職場や今の職場の情報は使わないようにします。
最初から値段を付けるべきか
最初は知り合いに試してもらい、言葉や範囲を直してから値段を付ける進め方もあります。ただ、無料のまま長く続けると、値段を付けるきっかけを失いやすくなります。
資格がないと受けられない内容はあるか
税金の申告の代行や法律の相談など、資格がないと受けられない仕事もあります。自分の経験が近い分野にかかわるときは、どこまでが受けてよい範囲かを先に調べておきます。
続けながら商品を育てるために
一度形にしたあとも、試した結果を見ながら少しずつ直していくと、商品が自分の働き方に合っていきます。
受けた内容を記録する
受けた相談や作業の内容、かかった時間、相手の感想を短く記録します。記録が増えると、よく頼まれる内容や時間のかかる作業が見えてきます。
型にできる部分を探す
毎回同じ説明をしている部分は、資料やチェック表にまとめられないかを考えます。型ができると、一回あたりの時間を減らせることがあります。
公的な情報も見ておく
中小企業庁の経営サポートのページには、事業を始める人や小さな事業者向けの支援の案内がまとめられています。商品を広げる段階で、使えそうなものがないか見ておくのも一つの方法です。
経験を副業の商品にする前のチェックリスト
商品として出す前に、次の点を確かめてみてください。
- 困りごとを一文にしたか誰の、どんな困りごとを、どこまで手伝うかが一文で言えるかを確かめます。
- 手伝う範囲と時間を区切ったか1回の時間や作るものの数が決まっていて、受けない範囲も書いてあるかを見ます。
- 知り合いに試してもらったかお金をもらう前に、言葉が伝わるか、役に立つかを誰かに確かめてもらったかを見ます。
- 就業規則と情報の扱いを確かめたか副業の決まりを確かめ、会社の資料や情報を使っていないかを見直します。
- 記録の置き場所を決めたか受けた内容とかかった時間を残す場所を、始める前に決めておいたかを確かめます。
まずは、この1年で同僚や知り合いから聞かれたことを3つ書き出してみてください。そのうち1つを「誰の、どんな困りごとを、どこまで手伝うか」の一文にすると、経験を商品にする最初の材料になります。
実践記事をもっと見る参考資料・出典
- 中小企業庁|経営サポート(確認日:2026年10月24日)


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