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異動や長めの休みが決まると、引き継ぎ資料を作る時間は思ったより取れません。ふだんの仕事を続けながら、空いた時間で少しずつ書くことになり、気づけば最終日の前日に慌てて仕上げている、という人もいるでしょう。引き継ぎ資料が書きにくいのは、頭の中にある仕事を思い出しながら、一から文章にしようとするからです。実は、自分がしてきた仕事の多くは、予定表や送ったメール、共有フォルダの更新の記録にすでに残っています。そこから仕事を拾い出し、決まった形に当てはめていけば、書く量を減らしながら抜けも見つけやすくなります。この記事では、仕事や事業の進め方を見直したい人に向けて、限られた時間で引き継ぎ資料を作る進め方を紹介します。受け取る側が読んで動ける形にするための、確かめ方もあわせて取り上げます。
- 引き継ぎ資料は、頭の中から書き起こすより、予定表やメールから仕事を拾うほうが速い
- 仕事ごとに「何を・いつ・どこに・誰と」の4つをそろえて書く
- 手順を細かく書くより、判断に迷う場面と例外を残すほうが役に立つことがある
- 受け取る人に一度読んでもらい、分からない点を質問してもらってから仕上げる
引き継ぎ資料づくりが後回しになりやすい理由
引き継ぎ資料は、作らなければならないと分かっていても、なかなか手が付かないものです。止まりやすいところを先に知っておくと、進め方を決めやすくなります。
何から書けばよいか決まらない
仕事の全体を思い浮かべようとすると、量が多く感じられて手が止まります。書き始める入り口が決まっていないことが、後回しの大きな原因になります。
記憶だけでは抜けが出る
毎月や年に一度の仕事、たまにしか来ない問い合わせは、思い出そうとしても出てきにくいものです。書き終えてから「あれも引き継いでいなかった」と気づくことがあります。
丁寧に書こうとして時間が足りなくなる
一つの仕事の手順を細かく書いているうちに時間がなくなり、ほかの仕事が手つかずのまま残ることがあります。全部を同じ細かさで書く必要はありません。
書き始める前に手元に集めておくもの
引き継ぎ資料の材料は、ふだん使っている道具の中にあります。書き始める前に、次のものを開いておきます。
過去数か月の予定表
会議や締め切り、定期的な作業が入っている予定表を見返します。毎週・毎月・四半期ごとにくり返している予定は、引き継ぐ仕事の候補になります。
送ったメールとチャット
自分が送ったメールやチャットを見ると、誰とどんなやりとりをしていたかが分かります。社外の取引先や、ほかの部署とのやりとりは抜けやすいので、送り先の一覧を見ておくと便利です。
よく開くファイルの場所
共有フォルダや表計算のファイルで、自分がよく更新しているものを書き出します。更新した日付の新しい順に並べると、いま動いている仕事が見えやすくなります。
年に数回しかない仕事の記録
決算や棚卸し、年に一度の契約の更新など、回数が少ない仕事は、前回のメールやファイルを探して残しておきます。次に担当する人が最も迷いやすいところです。
記憶から書く場合と、記録から拾って書く場合の違い
同じ引き継ぎ資料でも、どこから材料を集めるかで、かかる時間や抜けの出方が変わります。
かかる時間
記憶から書くと、思い出す時間と文章にする時間が重なり、一つの仕事に時間がかかります。記録から拾うと、まず一覧を作ってから中身を書くので、全体の量を早めにつかめます。
抜けの出方
記憶だけに頼ると、回数の少ない仕事や、相手から来る依頼が抜けやすくなります。予定表やメールを見返すと、自分では意識していなかった仕事にも気づきやすくなります。
受け取る側の使いやすさ
記憶から書いた資料は、書いた人の言葉や順番になりがちです。記録をもとにすると、日付や相手の名前、ファイルの場所が具体的に入り、受け取る側が確かめやすくなります。
| 記憶から書く | 記録から拾って書く |
|---|---|
| 時間がかかる思い出しながら書く | 全体を早くつかめる一覧を先に作る |
| 抜けが出やすい回数の少ない仕事 | 抜けに気づきやすい予定表とメールを見る |
| 書いた人の言葉になる確かめにくい | 日付や場所が入る受け取る側が確かめやすい |

限られた時間で引き継ぎ資料をまとめる進め方
次の順に進めると、全体を先に押さえてから中身を書けます。時間が足りないときも、優先する仕事から仕上げられます。
仕事の一覧を作る
予定表とメールを見返しながら、引き継ぐ仕事を1行ずつ書き出します。この段階では中身は書かず、仕事の名前と、くり返す間隔だけを並べます。
急ぐ順に並べる
休みや異動のあと、すぐに来る仕事を上に置きます。来月の締め切りがある仕事、毎週の会議などは先に、年に一度の仕事は後ろに回します。
4つの項目で書く
仕事ごとに「何をするか」「いつするか」「どこにファイルや記録があるか」「誰とやりとりするか」の4つを書きます。手順の細かい説明は、必要なものだけにとどめます。
迷いやすい場面を書き足す
ふだん自分が判断していること、例外が起きたときの対応、過去に困ったことを短く書き足します。手順よりも、こうした判断の部分が受け取る側の助けになることがあります。
受け取る人に読んでもらう
書き上げたら、受け取る人に一度読んでもらい、分からない点を質問してもらいます。質問された点を書き足してから仕上げると、口で説明した内容も資料に残せます。

具体例:2週間後に異動が決まった事務担当者の場合
総務の事務を担当していた人が、2週間後の異動に向けて引き継ぎ資料を作ったときの例です。
最初は頭の中から書こうとした
はじめは、思いついた仕事から順に手順を書いていました。3日たっても半分ほどしか書けず、何が残っているのかも分からない状態でした。
予定表から一覧を作った
そこで、過去3か月の予定表を見返し、くり返している予定を書き出しました。月に一度の備品の発注や、四半期ごとの集計など、思い出していなかった仕事が見つかりました。
メールから相手を拾った
送ったメールの宛先を見て、やりとりの多い取引先と社内の部署を一覧にしました。それぞれに「どんな用件で連絡するか」を一行ずつ添えました。
後任に質問してもらった
資料を後任に渡して読んでもらうと、「発注の量はどう決めているのか」という質問が出ました。自分では当たり前にしていた判断だったので、決め方を書き足して仕上げました。
引き継ぎ資料でよくある疑問
引き継ぎ資料を作るときに、よく出る疑問をまとめました。
どこまで細かく書けばよいか
毎日くり返す仕事は、受け取る人が見ながら一度やれば覚えられることも多いので、要点だけでもよい場合があります。回数が少ない仕事や、間違えると影響が大きい仕事は、細かめに書いておくと安心です。
パスワードや権限はどう引き継ぐか
パスワードを資料にそのまま書くのは避け、会社で決められた方法で受け渡します。ツールの権限の付け替えは担当の部署に頼む必要があることも多いので、早めに一覧にしておきます。
資料はどこに置けばよいか
受け取る人がいつでも開ける共有の場所に置きます。個人のパソコンの中だけに置いておくと、自分がいなくなったあとに探せなくなります。
引き継ぎのあとに質問が来たらどうするか
異動のあとも、しばらく質問に答えられるようにしておくと、受け取る側の不安が減ります。答えた内容は資料に書き足してもらうように頼んでおくと、次の人にも役立ちます。
引き継ぎ資料を次にも使える形にしておく
一度作った引き継ぎ資料は、ふだんから少しずつ手を入れておくと、次に急いで作る必要がなくなります。
仕事が増えたら一覧に足す
新しく担当した仕事は、その都度、一覧に1行足しておきます。異動や休みが急に決まったときも、一覧があれば中身を書くところから始められます。
迷った場面を書き残す
ふだんの仕事で判断に迷った場面や、例外の対応をしたときに、短くメモしておきます。こうした記録は、引き継ぎ資料のいちばん役に立つ部分になります。
事業の仕組みを見直すきっかけにする
引き継ぎ資料を作ると、一人だけが知っている仕事や、やり方がそろっていない仕事が見えてきます。中小企業庁の経営サポートのページなど、公的な情報も参考にしながら、仕事の進め方を見直すきっかけにする方法もあります。
引き継ぎ資料を渡す前のチェックリスト
引き継ぎ資料を渡す前に、次の点を確かめてみてください。
- 予定表とメールを見返したか記憶だけでなく、予定表と送ったメールから仕事を拾ったかを確かめます。
- 急ぐ仕事が上にあるか引き継いだあと、すぐに来る仕事が一覧の上にあるかを見ます。
- 4つの項目がそろっているか仕事ごとに、何を・いつ・どこに・誰との4つが書いてあるかを確かめます。
- 迷いやすい場面を書いたか判断の基準や例外の対応、過去に困ったことを書き足したかを見ます。
- 受け取る人に読んでもらったか受け取る人に読んでもらい、質問された点を書き足したかを確かめます。
まずは、この1か月の予定表と送ったメールを見返して、くり返している仕事を1行ずつ書き出してみてください。一覧ができたら、急ぐ仕事を1つ選び、何を・いつ・どこに・誰との4つで書いてみると、引き継ぎ資料の最初の1ページになります。
実践記事をもっと見る参考資料・出典
- 中小企業庁|経営サポート(確認日:2026年10月25日)


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