有給休暇を取ろうとしたとき、「この案件は自分しか分からない」「休んでいる間に問い合わせが来たらどうしよう」と考えて、結局予定を先送りした経験はないでしょうか。休みの前日に慌てて引き継ぎのメモを書き、休みの間もスマートフォンで連絡を確かめてしまう、という人もいるかもしれません。休みが取りにくい理由は、忙しさだけではなく、仕事の中身が一人の頭の中にしかないことにある場合があります。休む直前の引き継ぎでまとめて渡そうとすると、手間がかかり、伝え漏れも起きやすくなります。この記事では、仕事や事業の進め方を見直したい人に向けて、ふだんから仕事を共有しておくことで、休みを取りやすくする考え方を紹介します。何もかもを共有する必要はありません。休んだ日に困りそうなところから、少しずつ見える場所に置いていく進め方です。
- 休みにくさの一因は、仕事の途中の状態が一人の頭の中にしかないこと
- 休む直前にまとめて引き継ぐより、ふだんから少しずつ共有しておく
- 共有するのは「今どこまで進んでいるか」「次に何をするか」「誰に聞けばよいか」
- 休んだあとに困ったことを振り返り、共有の中身を足していく
休みを取りにくくしている仕事の状態
休みが取りにくいと感じるとき、仕事の量だけでなく、仕事の置かれ方にも理由があることがあります。よく見られる状態を先に確かめておきます。
途中の状態が自分にしか分からない
取引先とのやりとりがどこまで進んでいるか、資料のどこまでできているかが、自分のメールや手元のメモの中にしかないことがあります。周りの人は手伝おうとしても、どこから手を付ければよいか分かりません。
決まった連絡先が一人になっている
取引先や社内のほかの部署から、いつも同じ人にだけ連絡が来ることがあります。その人が休むと連絡が止まり、休みの間も気になって確かめてしまう原因になります。
引き継ぎが休む直前に集中する
休みが決まってから引き継ぎの準備を始めると、前日や当日に作業が集中します。準備の手間が大きいほど、休むこと自体が負担に感じられ、予定を先送りしやすくなります。
共有を始める前に書き出しておくこと
いきなりすべての仕事を共有しようとすると、手が止まります。まずは自分の仕事を書き出し、どこから共有するかを決める材料にします。
今抱えている仕事の一覧
進めている案件、毎週や毎月くり返す作業、問い合わせへの対応などを、一行ずつ書き出します。細かく分けすぎず、人に説明するときの単位で書くと扱いやすくなります。
休んだ日に困りそうな仕事
一覧の中から、自分が一日いないと問い合わせが来そうなもの、期限が近いものに印を付けます。共有はこの印を付けたものから始めます。
仕事の情報がある場所
それぞれの仕事について、資料やメール、やりとりの記録がどこにあるかを書きます。個人のフォルダやメールの中にしかないものは、共有の場所へ移す候補になります。
休み方についての考え方
厚生労働省の働き方・休み方改善ポータルサイトでは、休暇を取りやすくするための考え方や、会社の取り組みの例が紹介されています。チームで話し合うときの材料として目を通しておくのもよいでしょう。
休む直前に引き継ぐ場合と、ふだんから共有しておく場合の違い
どちらも仕事を人に渡すことには変わりありませんが、かかる手間や、休みの間の安心感が変わってきます。
準備にかかる手間
休む直前の引き継ぎでは、すべての仕事の状態を一度に書き出す必要があり、前日に時間を取られがちです。ふだんから共有しておくと、休む前に足すのは最新の状態だけで済みます。
伝え漏れの起きやすさ
急いで書いた引き継ぎのメモは、本人にとって当たり前のことが抜けやすくなります。ふだんから共有していれば、周りの人が読んで分からないところを、休む前に聞いてもらえます。
休みの間の連絡
直前の引き継ぎだけだと、受け取った人が判断に迷い、休んでいる人に連絡が来ることがあります。ふだんから見える場所に情報があれば、まずそこを見て対応できる場面が増えます。
| 休む直前に引き継ぐ | ふだんから共有する |
|---|---|
| 前日に手間が集中一度に書き出す | 最新の状態を足す週に一度だけ |
| 伝え漏れが起きやすい急いで書く | 前もって聞いてもらえる読んで確かめる |
| 休み中に連絡が来る判断に迷う | 見て対応できる情報が見える |

仕事を共有して休みを取りやすくする進め方
次の順に進めると、無理なく共有の範囲を広げられます。一度に全部を変える必要はありません。
困りそうな仕事を3つ選ぶ
書き出した一覧のうち、休んだ日に問い合わせが来そうな仕事を3つ選びます。最初から全部を対象にせず、数を絞ることで続けやすくなります。
共有する場所を決める
チームで使っている共有フォルダや、予定表、やりとりのツールなど、周りの人が見られる場所を一つ決めます。新しい仕組みを入れるより、いま使っている場所を使うほうが始めやすいでしょう。
3つのことを短く書く
選んだ仕事ごとに、今どこまで進んでいるか、次に何をするか、分からないときに誰に聞けばよいかを、数行で書きます。きれいな文章にする必要はなく、読んだ人が次の一手を取れれば十分です。
週に一度だけ書き直す
毎日更新しようとすると続きにくくなります。週の終わりなど、決まった日に一度だけ進み具合を書き直すようにします。予定表に短い時間を取っておくと忘れにくくなります。
休んだあとに振り返る
休みから戻ったら、休みの間に聞かれたことや、困ったことを周りの人に聞きます。足りなかった情報を共有の中身に足していくと、次の休みはもっと取りやすくなります。

具体例:取引先の窓口を一人で受け持っていた担当者の場合
小さな会社で、複数の取引先との連絡を一人で受け持っていた担当者の例です。
休みの間も連絡を確かめていた
はじめは、休みの日にもメールを確かめ、取引先からの質問に返事をしていました。周りの人に頼もうにも、どの案件がどこまで進んでいるかを説明するのに時間がかかり、自分でやったほうが早いと感じていました。
取引先ごとに一枚の表を作った
共有フォルダに、取引先ごとの表を作りました。今の案件、次にすること、先方の担当者の名前、よく聞かれる質問を書き、週の終わりに一度だけ書き直すことにしました。
同僚に一度読んでもらった
表を作ったあと、同僚に読んでもらい、分からないところを聞いてもらいました。自分では当たり前だと思っていた、見積もりの出し方の決まりが抜けていたことが分かりました。
休みの間の連絡が減った
次に休んだときは、同僚が表を見て取引先に答えられた場面がありました。戻ってから困ったことを聞き、表に足すようにしたところ、休みを申し出るときの気の重さが少し軽くなったと感じています。
休みと仕事の共有についてよくある疑問
仕事を共有して休みを取りやすくしようとするときに、よく出る疑問をまとめました。
共有すると自分の仕事を取られないか
仕事を共有することは、仕事を手放すこととは違います。担当はそのままで、周りの人が状態を知っているだけでも、休みの日の対応はしやすくなります。気になる場合は、担当者を共有の場所に書いておくとよいでしょう。
共有のための時間がとれない
最初は、困りそうな仕事を3つに絞り、一つにつき数行書くところから始めます。休む直前にまとめて引き継ぎを書く時間を、ふだんに少しずつ分けるという考え方です。
周りの人に負担がかからないか
休んでいる間の対応を頼む以上、相手の負担はゼロにはなりません。だからこそ、次に何をすればよいか、誰に聞けばよいかを先に書いておくと、相手が迷う時間を減らせます。お互いが休むときに同じようにできれば、負担は偏りにくくなります。
どこまで共有すればよいか
まずは、休んだ日に聞かれそうなことに答えられる程度で十分です。取引先との約束や、社外に出せない情報の扱いなど、社内の決まりがあるものはそれに沿って共有の範囲を決めます。
チームで休みを取りやすくするために話し合っておくこと
一人で共有を進めるだけでなく、チームで少し話し合っておくと、休みを取りやすい雰囲気が広がります。
共有の場所と書き方をそろえる
人によって書く場所や書き方が違うと、探すのに時間がかかります。どこに、何を書くかを簡単にそろえておくと、誰が休んでも同じように探せます。
休みの予定を早めに見せる
休みの予定を予定表などで早めに見せておくと、周りの人も仕事の段取りを組みやすくなります。休む人も、前もって共有の中身を見直す時間が取れます。
休みの間の連絡の決まり
急ぎのときだけ連絡する、連絡はこの方法で、のように、休みの間の連絡の決まりをチームで話しておきます。休む人も、休みを受け持つ人も、判断に迷いにくくなります。
休みを取る前の仕事の共有チェックリスト
休みを申し出る前に、仕事の共有について次の点を確かめてみてください。
- 困りそうな仕事を選んだか休んだ日に問い合わせが来そうな仕事を選び、共有の対象にしたかを見ます。
- 進み具合を書いたか選んだ仕事が今どこまで進んでいるかを、周りの人が見られる場所に書いたかを確かめます。
- 次の作業と聞き先を書いたか次に何をするか、分からないときに誰に聞けばよいかを書いたかを見ます。
- 誰かに読んでもらったか共有した中身を一度ほかの人に読んでもらい、分からないところがないかを確かめます。
- 休みの間の連絡を決めたか急ぎのときの連絡の方法を、周りの人と話しておいたかを見ます。
まずは、自分が抱えている仕事のうち、休んだ日に問い合わせが来そうなものを3つ選んでみてください。それぞれについて、今どこまで進んでいるか、次に何をするか、誰に聞けばよいかを数行で書き、チームが見られる場所に置くところから始められます。
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