「請求書を送ります」「アカウントが止まります」「荷物をお届けできませんでした」。毎日届くメールの中に、こうした件名が混ざっていて、開いてよいのか手が止まった経験はないでしょうか。いつもの取引先やよく使う通販サイトの名前が書かれていると、つい本物だと思って添付ファイルを開いたり、リンクを押したりしてしまいがちです。小さな会社や個人で仕事をしていると、情報システムの担当者がいないことも多く、怪しいかどうかを自分一人で判断しなければならない場面もあります。不審なメールは見た目が年々よくできていて、一目で見分けるのは難しくなっています。だからこそ、毎回同じ場所に目を向ける習慣と、迷ったときに開かずに確かめる手段を持っておくことが役に立ちます。この記事では、仕事や事業の進め方を見直したい人に向けて、不審なメールの見分け方と、職場で決めておきたい対応の流れを紹介します。ここで挙げる見分け方は手がかりの例で、これだけで安全だと言い切れるものではありません。
- 不審なメールは見た目では区別しにくく、毎回同じ場所に目を向ける習慣が役に立つ
- 送り主のアドレス、リンクの行き先、急がせる言葉の3か所は特に見ておきたい
- 迷ったときはメールの中のリンクや電話番号を使わず、別の手段で相手に確かめる
- 開いてしまったときに誰に何を伝えるかを、先に決めておく
不審なメールに気づきにくくなる場面
不審なメールは、注意している人でも見落とすことがあります。どんなときに気づきにくくなるのかを先に知っておくと、身構えるところが分かります。
いつもの相手の名前が書かれている
取引先や銀行、よく使うサービスの名前で届くと、中身を疑う前に開いてしまいがちです。差出人の表示名は送る側が自由に付けられるため、名前だけでは本物かどうか分かりません。
忙しい時間に届く
朝の受信が多い時間や、締め切りの前など、急いでメールを片付けているときは、細かいところまで見る余裕がなくなります。不審なメールに気づきにくいのは、こうした時間帯です。
仕事の流れに合った内容になっている
請求書、見積もり、配送の連絡など、ふだんの仕事でよく受け取る内容だと、違和感を持ちにくくなります。やりとりの途中に見えるような件名が付いていることもあります。
見分ける前に知っておきたいこと
見分け方の前に、どんな手口があるのかを大まかに知っておくと、メールを見たときに引っかかりを感じやすくなります。
どんな脅威があるかを知る
IPA(情報処理推進機構)は毎年「情報セキュリティ10大脅威」をまとめていて、組織や個人がどんな被害に遭いやすいかが紹介されています。メールを入り口にした手口も取り上げられているので、一度目を通しておくと全体の様子がつかめます。
よく使うサービスの連絡の仕方
取引のある銀行や、よく使う通販サイトが、ふだんどんな方法で連絡してくるかを確かめておきます。メールで暗証番号を聞くことはないと案内しているサービスもあり、それを知っているだけでも判断の材料になります。
取引先の正しいアドレス
よくやりとりする取引先のメールアドレスを、アドレス帳に登録しておきます。登録した名前と届いたメールのアドレスを比べられるようになります。
迷ったときの相談先
社内で誰に聞けばよいかを決めておきます。担当者がいない小さな職場では、相談役を一人決めておくだけでも、一人で抱え込まずに済みます。
本物らしく見える部分と、不審さが出やすい部分の違い
不審なメールは、目に入りやすいところほど本物に似せて作られていることがあります。見た目に頼る見方と、中身を確かめる見方を比べます。
差出人の表示
受信箱に出る差出人の名前は、本物と同じにできます。名前の横や詳細を開くと見られるメールアドレスのほうが、不審さが出やすい部分です。会社の名前に似せた別のドメインが使われていることもあります。
リンクの見た目と行き先
本文に書かれたリンクの文字と、押したときに開く行き先が違うことがあります。パソコンではリンクにマウスを重ねると行き先が表示されるので、押す前に見ておけます。
ロゴや文面の整い方
ロゴやレイアウトが本物そっくりでも、内容が本物とは限りません。むしろ「今日中に」「アカウントを停止します」のように、急いで操作させようとする言葉が入っていないかに目を向けます。
| 本物らしく見える部分 | 不審さが出やすい部分 |
|---|---|
| 差出人の表示名自由に付けられる | メールアドレスドメインを見る |
| リンクの文字見た目は本物 | リンクの行き先押す前に表示 |
| ロゴや文面そっくりに作れる | 急がせる言葉今日中・停止 |

不審なメールを開く前に確かめる進め方
毎回すべてを細かく調べるのは大変です。次の順に見ていくと、短い時間で引っかかりに気づきやすくなります。
送り主のアドレスを見る
表示名ではなく、メールアドレスそのものを見ます。いつものやりとりと違うドメインになっていないか、似た文字に置き換わっていないかを確かめます。アドレス帳に登録した相手なら、登録したアドレスと比べます。
件名と本文の言葉を読む
支払いの催促、パスワードの再設定、アカウントの停止など、急いで何かをさせようとする言葉がないかを見ます。思い当たる取引がないのに請求や配送の連絡が来ている場合も、立ち止まる合図になります。
リンクの行き先を確かめる
リンクは押す前に行き先を表示させ、知っているサービスのアドレスかどうかを見ます。少しでも迷ったら、メールのリンクは使わず、ブックマークや自分で入力したアドレスから公式のページを開きます。
添付ファイルの形を見る
思い当たらない添付ファイルは開かずにおきます。圧縮ファイルや、マクロを有効にするよう促すファイルが届いたときは、送り主に確かめてから扱います。
別の手段で相手に確かめる
迷ったときは、メールに書かれた電話番号や返信ではなく、ふだん使っている連絡先で相手に問い合わせます。本物だった場合も、確かめた分の時間で済むと考えると、聞く負担は小さく感じられます。

具体例:取引先を名乗る請求書メールが届いた事務担当者の場合
従業員の少ない会社で、経理と事務を一人で受け持っている人の例です。
いつもの取引先の名前で届いた
ある朝、いつもの取引先の名前で「請求書の送付先が変わりました」というメールが届きました。添付ファイルを開いて、新しい振込先を確かめるよう書かれていました。
アドレスを見て違和感に気づいた
差出人の名前はいつも通りでしたが、アドレスを開いてみると、ドメインが一文字だけ違っていました。アドレス帳に登録していたアドレスと比べて気づくことができました。
電話で取引先に確かめた
メールに書かれた電話番号ではなく、名刺にある番号に電話をかけて担当者に聞きました。振込先を変えた事実はないと分かり、添付ファイルは開かずに削除しました。
社内で同じ流れを共有した
その後、社長と相談して、振込先の変更などお金に関わる連絡は、メールだけで決めず電話でも確かめる、という決まりを作りました。迷ったときに一人で判断しなくてよくなったと感じています。
不審なメールの見分け方でよくある疑問
不審なメールの見分け方について、よく出る疑問をまとめました。
日本語が自然なら安心してよいか
以前は不自然な日本語が手がかりになることもありましたが、今は自然な文章で届くこともあります。言葉の自然さだけで判断せず、アドレスやリンクの行き先もあわせて見るほうが安心です。
開いただけで問題になるか
メールを開いただけで被害が出るかどうかは、メールの中身や使っている環境によって違います。添付ファイルを開いた、リンク先で入力した、という場合は特に、早めに相談先へ伝えることが大切です。
リンクを押してしまったらどうするか
入力をしていなければ、すぐにページを閉じます。パスワードなどを入力してしまった場合は、そのサービスの公式のページからパスワードを変え、社内の相談先に伝えます。仕事のアカウントであれば、自分だけで片付けないことが大切です。
迷惑メールの仕分けに任せてよいか
迷惑メールの仕分けは役に立ちますが、すべてを止められるわけではありません。受信箱に届いたメールも、送り主やリンク先を見る習慣は持っておきたいところです。
職場で決めておきたい不審なメールへの対応
見分け方を一人が覚えるだけでなく、職場で対応の流れを決めておくと、迷ったときに動きやすくなります。
相談する相手と伝え方
不審なメールに気づいたとき、開いてしまったときに、誰に、どの方法で伝えるかを決めておきます。メールを転送するのか、画面の写しを送るのかなど、伝え方もそろえておくと迷いません。
お金に関わる連絡の確かめ方
振込先の変更や、急ぎの支払いの依頼など、お金に関わる連絡は、メールだけで決めずに別の手段でも確かめる、という決まりを作っておきます。
届いた例を共有する
職場に届いた不審なメールの例を、件名や特徴だけでも共有しておきます。実際の例を見ておくと、ほかの人も同じようなメールに気づきやすくなります。
不審なメールを見分けるためのチェックリスト
メールを開く前や、リンクを押す前に、次の点を確かめてみてください。
- アドレスを見たか表示名ではなく、送り主のメールアドレスを確かめたかを見ます。
- 急がせる言葉はないか今日中、停止、至急など、急いで操作させる言葉が入っていないかを確かめます。
- リンクの行き先を見たかリンクを押す前に、行き先が知っているサービスのアドレスかを見ます。
- 思い当たる用件か請求や配送などの連絡に、自分の側で思い当たる取引があるかを確かめます。
- 相談先を知っているか迷ったときや開いてしまったときに、誰に伝えるかを決めてあるかを見ます。
まずは、受信箱にある最近のメールを1通選び、送り主のアドレス、リンクの行き先、急がせる言葉の3か所を実際に見てみてください。あわせて、迷ったときに相談する相手を1人決めておくと、不審なメールが届いたときに落ち着いて動けます。
実践記事をもっと見る参考資料・出典
- IPA|情報セキュリティ10大脅威(確認日:2026年10月28日)


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